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ざっくり感想 おすすめだけど長いので、時間が無ければもっとお手軽な書籍が良いかも
いわゆる古典と言われるような株式投資の指南書であり、内容は非常に有益だった。
巷のインデックス投資を勧める投資書籍はほとんどこの本を元ネタにして書かれてると感じる。
ただ一つ難点があるとすれば、長くて読み進めるのが大変だということ。
なので読書にそんなに時間をかけられないというような忙しい人であれば「お金は寝かせて増やしなさい」とかもう少しお手軽な書籍でも十分にエッセンスは入っていると感じたので、そちらをお勧めする。
本書のざっくりした結論としてファンダメンタル理論も砂上の楼閣学派も一理あるが結局市場のインデックスに対してアウトパフォームするのは難しいのでドルコスト平均法でインデックスを買うのがいいよというのが結論である。
後はエリスの敗者のゲームを読んだ時も感じたことだが、言ってることは間違ってないと思うがどうしても自身の関係するボーグルのバンガードの商品をお勧めしがちなのはちょっとだけ気になった。
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気になった記述
ファンダメンタル価値学派と砂上の楼閣学派
大体内容としては株式の価値というのはそもそも将来のすべての配当を割り引いた現在価値の総額に等しいということを書いてある。
本説の第一任者はジョンバーウィリアムズであるそして投資家に対して将来受け取る金額の割引現在価値を求めるように勧める。これがファンダメンタル価値学派の主張である。
また経済学者だけでなくグレアムとドッドの名著「証券分析」でもファンダメンタル価値理論は語られており、ウォール街の証券アナリストたちはこの理論の信奉者になった。
これは要するに市場で一時的に本来の価値を下回ってる銘柄を買い、上回ってる銘柄を売る、ということに尽きるということである、単純明快でわかりやすい。
この投資方針はウォーレンバフェットに引き継がれ、バフェットは伝説的な投資成果を長期間にあげてきた。これはファンダメンタル価値論を忠実に実践してきた結果だと信じられている。
対して砂上の楼閣学派は心理的要素を重視する。ケインズは株式投資の本質を美人コンテストに例えた。
歴史上で繰り返し発生している投機バブルについて
本書の中では過去発生した投機バブルについて、第2章で書かれている。
一つ目はオランダのチューリップバブル
二つ目はイギリスの南海バブル
三つ目は1920年代の大恐慌を引き起こしたウォール街が育んだバブル
また追加の項目として80年代90年代の日本の不動産バブルや2000年代のサブプライムローンバブルも多少言及してある、また21世紀のインターネットバブルについても記載があった。
ここを読んだ感想はバブルはあきれるほど繰り返し発生しており、投資家達は過去に学ぶことが出来ないということ。そしてバブルは結果論的に語られる事が多いということ。
自分自身も気づかないうちにバブルの真っただ中に居て、感覚が麻痺している可能性が常にあると認識する必要が有る。
チャーチストとファンダメンタル分析について
本書ではチャーチストは最終的に上手くいかないと言及されている。
チャーティストの予想を市場が裏切った場合は騙しと呼び例外的な現象とみなす。
また本書で推奨されているランダムウォーク理論と効率的市場仮説が正しいとするならばチャートリーディングのテクニックが大勢の知るところになった瞬間にそのテクニックは無意味化する とも書かれている。
ただし本書ではファンダメンタル分析にも問題点があるという風に言及している。
ファンダメンタル分析にも、三つの問題点がある。
まず第一に情報や分析が正しいと限らないという点
第二にはアナリストが価値の推定を間違う可能性
第三には市場がすぐに自分の誤りを訂正するとは限らないということ、いわゆるバリュートラップみたいなことである。
その問題点を踏まえた上でファンダメンタル分析に基づいて銘柄の割安判断をする時には三つのルールに基づいたアプローチが大事だと書いてある。
第一のルールは利益成長率が今後5年以上にわたって市場平均を上回る銘柄を買うこと。
第二のルールは株価がファンダメンタル価値以上に乗ってる銘柄には手を出さないこと。
第三のルールは投資家が砂上の楼閣を作れるようなストーリーが描ける銘柄を探すこと。
一部テクニカル分析についても書いてあるがテクニカル分析に基づいて利益を得た投資家はいないということ、また一部モメンタムを発生したとしてもそういった相関は何も非常に小さく取引に伴って発生する手数料を上回ることはない、と書いている。
人間の性質として秩序を好みランダムな事柄の中からパターンをどうしても探し出してしまうという性質があることから、こういったテクニカル戦略が生まれてしまうとも書いてある。
だがしかし今現在でもテクニカルアナリストが雇われ続ける理由は証券会社が手数料儲けるために雇われると言及している、確かにテクニカル戦略は必ずと言っていいほど頻繁な銘柄の乗換取引を伴うのでこの意見は納得できる。
加えてファンダメンタルの構造的な問題点として、ランダムに発生する事件や企業によるクリエイティブな会計手法(つまり粉飾決済など)や単純にアナリストによる計算の間違いなどがあるため、必ずしも正しい結論 を導けないなどといった問題があり必ずしも正しい結果は出てこない。
そのため結局投資家に平均以上のリターンを提供できるかという点でファンダメンタルもテクニカルと大して変わらないと書いており結局は効率的市場仮説に行き着くというような論調で書いてある。
ノーベル賞受賞したポールサミュエルソンは要約するとこのようなこと言っている
仮に多数の人がある銘柄について分析した結果で売買を行ってる場合、特にそうした分析を行わずに受動的に買っている投資家でも、現在の株価で買うことになる。
つまりそうした分析の結果により現在株価になっている株を買うことになるため、分析をした投資家と変わらない結果が得られる。
こういった投資家から見れば受動的な売買も複雑な銘柄選択も大した違いはないということである。
効率的市場理論とは株価がランダムにフラフラ動くということではなく、株価は新しいファンダメンタル情報に対して非常に素早く反応するため、それに基づいて利益を得られる投資家はいない、ということを言っているようだ。
重要な新情報はランダムに発生するためそれは過去のテクニカルだったりファンダメンタルの情報を研究してみても予見はできないと書いている。
さらに、ファンダメンタル分析の父と言われる伝説的なベンジャミングレアムでさえこう述べているそうだ。
どんなに精巧な証券分析をしても優れたリターンを得ることはできないかもしれない。こうした分析テクニックは証券分析の本が出版された40年前には有効だったが状況は変わった、私の意見は効率的市場仮説学派の方に近いと言える。
つまり驚異的なパフォーマンスを残したマゼランファンドのピーターリンチや、バフェットの言ってる通り、ほとんどの投資家は積極運用タイプの投資信託に投資するよりもインデックスを購入した方が長期的には報われるということだ。
ポートフォリオ理論、CAPM、行動ファイナンス理論について
後はポートフォリオ理論、要するに分散した銘柄は分散した方がリスク標準偏差を小さくなるよということ にも言及してある。
加えてβの話として、株式市場が全体が変動するリスク(システマティックリスク)を説明している、CAPM の記述もある。これはいかにポートフォリオ分散させようと市場全体の変動リスクについてはヘッジできないということを言っている 。
また行動ファイナンスについても言及されているが、この話については他の書籍などでも多数言及されているので特に特筆すべきところはないかなと感じた。
効率的市場仮説の正当性について
また効率的市場理論の正当性をについても書いてある。なぜ効率的市場理論が正しいかと言うと超過リターンが得られるパターンが一時的に存在しても大勢がそのことに気づくことでその効果が薄れてくるということである 。
非合理の価格形成や超過リターンが予測できるようなパターンが起こり、ある期間続くすることもあり得るが、しかしそういった機会が存在すると法に多数の投資家がいち早く気がついて行動するため、やがてその超過リターンを消滅してしまう、というのが効率的市場仮説の主張である。
例えるならもし道端に100ドル札が落ちていることがあるにしてもその長いこと放置されてることはありえない、という風に結んでいる。確かにその通り。
また、リスクとリターンは正比例し 、そしてリスクは投資期間に依存する株式に投資した場合は長期間保有するという原則を守ればリスクのかなりの部分も減らすことができるということだ。(これは効率的市場仮説により、低リスク高リターンの投資機会はすぐに消滅するからという事だと考える)
株式投資の年々のリターンの振れは大きいが 、この値動きのブレは投資期間に比例して小さくなり、25年になると上に6.7下に2.6パーセントとなる。
投資期間が例えば2、30年と長期間であれば株式で運用するのが最も有利だと言える。またドルコスト平均法もリスクを効果的に軽減するし、それに加えてリバランスを行うことでリスクを減らしリターンを高めることができる。
第14章では、ウォール街に打ち勝つための三つのアプローチ+1が書かれている。
第一は思考停止型の歩き方、色々なタイプのインデックスファンドを買うというやり方。
第二は手作り方の歩き方、これは株を選択し、ひとつずつ集めるというアプローチの仕方。
第三のは専門家任せの歩き方、これは投資信託を購入する、つまりプロに任せるというやり方である。
それに加えてマルキールステップというアプローチを上げていた、これは大幅割安になってる会社型投資信託を買うという方法だということだが、現在ではこの戦略が皆に真似をされあまり有効な手段とは言えないということを著者は述べている 。
結論
著者は株式投資の不滅の真理とは
1、幅広い分散投資
2、年1回のリバランス
3、インデックスファンドの活用
4、良い時も悪い時も確信をもって投資方針を貫くこと
であると書いているそしてこのルールを守れば手痛い失敗から身を守ることができるということだ。
著者も投資は一種のアートであると書いてある、これはアルファを探せという本に書かれていた結論と同様の内容の結論だが、よく調べて書かれているので納得感がある。